今まで介護休業給付金制度を利用できるのは64歳以下の方まででしたが、平成29年(2017年)1月1日から雇用保険の適用範囲が拡大され、65歳以上の方も介護休業給付金制度を利用することができるようになりました。
そこで今回は、65歳以上の方の介護休業給付金制度について、「支給要件」や「支給額の計算方法」などをまとめてみましたので、良かったら参考にしてみてください^^
■65歳からの雇用保険:高年齢求職者給付金の基本手当日額と計算方法
65歳以上の介護休業給付制度
直近のデータでは、介護を理由に会社を辞める人が年間約10万人いると言われる中で、介護休業制度を利用している人はわずか3%というのが現実のようです。
そこでより多くの人が介護をしながら仕事を続けられるように、2017年1日1日から65歳以上の高年齢者の方でも介護が理由で仕事を休む場合、その休んだ期間(給料が減額または、もらえない場合)に支給される給付金が介護休業給付金制度です。
また、今までの介護休業は93日間を1度しか取得することができませんでしたが、今回の改正で、93日間を3回まで分割して取得することができるようになりました。
介護といっても、入院、退院、施設の入所など、介護が必要な時期は何度もあるため、その辺りが考慮されています。
支給要件の確認
介護休業給付金は、以下の条件を満たしている場合に支給対象となります。
- 負傷、疾病または身体上・精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護が必要な家族を介護するために休業する場合
- 被保険者が、その期間の初日及び末日を明らかにして事業主に申出を行って、これにより被保険者が実際に取得した休業であること
家族とは・・・雇用保険加入者の配偶者・父母(養父母含む)・配偶者の父母(養父母含む)・子(養子含む)・祖⽗⺟・兄弟姉妹・孫です。
2週間以上とは・・・介護休業の対象となる期間ではなく、常時介護(要介護の認定の有無は無関係)を必要とする期間なので、極端な話、1日だけ介護休業を取得した場合でも申請することが可能です。
支給対象者の確認
- 雇用保険の一般被保険者であること
- 介護休業開始日前の2年間に11日以上勤務した月が12ヶ月以上あること
- 支給単位期間に就業していると認められる日が10日以下であること(※)
※介護休業給付金の支給期間は、介護休業開始日から起算して1ヶ月ごとに区切った期間を支給単位期間といい、この支給単位期間に「就業していると認められる日が10日以下」でなければ支給対象とはならいので注意してください。
ただし、介護休業の終了により、1ヶ月に満たない支給単位期間については、就業していると認められる日数が10日以下であっても、介護休業日が1日以上あれば支給対象となります。
例えば、8/6~10/20まで介護休業した場合の支給単位期間は以下のとおりです。
支給単位期間①:8/6~9/5
支給単位期間②:9/6~10/5
支給単位期間③:10/6~10/20
介護休業給付金は、対象家族1人につき、通算93日(最大3支給単位期間)まで受給することが可能です。
<派遣・契約社員の方の場合>
派遣社員や契約社員など、有期契約労働者の場合は、介護休業開始時点で以下の条件を満たしている必要があります。
- 1年以上、継続して雇用された期間があること
- 93⽇経過後から6ヶ月を経過するまで契約終了が決まっていないこと
介護休業開始日の時点で、介護休業終了後に退職予定のある方は支給対象外となりますので、ご注意ください。
介護休業給付金はいくらもらえる?計算方法を確認
それでは、介護休業給付金はいくらもらえるのか?まずは、計算式から確認していきましょう。
介護休業給付金の月額=休業開始時の賃金日額×支給日数×67%
「休業開始時の賃金日額」とは?
休業開始時の賃金日額は、休業開始前6ヶ月分の賃金の総額÷180で計算をします。
賃金とは?
税金や雇用保険料などが控除される前の総支給額です。よって、賃金には通勤手当なども含まれます。
ここの賃金日額には、年齢ごとに上限が設定されています。計算で求められた賃金日額を下記の表に当てはめて、上限額をオーバーしている場合は上限額を使って計算をしていきます。
年齢 | 賃金日額の上限 |
---|---|
29歳以下 | 13,700円 |
30~44歳 | 15,210円 |
45~59歳 | 16,740円 |
60~64歳 | 15,970円 |
(※令和2年8月1日~令和3年7月31日までの金額です。上限額は毎年8/1に改訂されます。)
例:30歳~44歳までの方で賃金日額が15,500円の場合は、上限額の15,210円で計算をします。
「支給日数」を確認
支給対象期間(介護休業した日数)が4/1~4/30の場合、支給日数は「30日」となります。
「67%」とは?
介護休業給付金の支給率です。
平成28年8月1日以降は「67%」支給となりました。
計算例で確認
例:月給が20万円だったAさん(35歳)が4/1~4/30(支給日数30日)介護休業した場合
休業開始時の賃金日額は(20万円×6ヶ月÷180)6,666円となります。
先ほどの計算式⇒介護休業給付金の月額=休業開始時の賃金日額×30日×67%に当てはめて計算すると、
6,666円×30日×67%=133,987円
Aさんの介護休業給付金の月額は133,987円となります。
(令和2年8月1~令和3年7月31日までの支給限度額は336,6474円です。)
但し、支給期間中に会社から賃金が支払われる場合は注意が必要です!詳しくは、次項で確認していきましょう。
支給対象期間中に賃金の支払がある場合
介護休業期間中に会社から賃金の支払がある場合は、介護休業給付金は減額または不支給となることがありますので、確認していきましょう。
・支払われた賃金が休業開始時の賃金月額の13%以下だった場合
⇒全額支給(休業開始時の賃金月額×67%=支給額)となります。
・支払われた賃金が休業開始時の賃金月額の13%以上~80%以下だった場合
⇒休業開始時の賃金月額×80%-支払われた賃金=支給額となります。
・支払われた賃金が休業開始時の賃金月額の80%以上だった場合
⇒不支給となります。
例えば、休業開始時の賃金月額が30万円の人が介護休業を取得し、会社から賃金が支払われた場合の介護休業給付金は、次のようになります。
休業開始時の賃金月額=休業開始時の賃金日額×30日
<会社から賃金15万円が支払われた場合>
支払われた賃金が休業開始時の賃金月額の50%になるため、「13%以上~80%以下」の計算式を使います。
300,000円×80%-150,000円=90,000円
介護休業給付金:90,000円
<会社から賃金25万円が支払われた場合>
支払われた賃金が休業開始時の賃金月額の83%になるため、「80%以上」で不支給となります。
いつもらえるの?
介護休業給付金の申請後、審査が行われ、無事に認定されると「支給決定通知書」が発行されます。
「支給決定通知書」が手元に届いてから1週間前後で指定の口座へ入金されることになっています。
終わりに
最近では65歳を過ぎてからも働き続ける方が増えていることから、高年齢者に対して雇用保険の適用範囲が拡大されました。
65歳以上の方で派遣や契約社員など有期労働者と呼ばれている方も利用できる制度なので、介護が理由で退職をお考えの方は、介護が終了したあとの生活も視野に入れて、お勤め先の会社と相談してみては如何でしょうか?
それでは今日も最後までお読みいただきありがとうございました。この記事が少しでもあなたのお役に立てたら幸いです。