今回の記事は前回の「高年齢雇用継続給付の条件:支給限度額と基本給付金の計算方法を確認」の続きで、もう一つの高年齢雇用継続給付「高年齢再就職給付金」についてまとめてみました。

高年齢再就職給付金とは「どのような給付金なのか?」また「もらうための条件(支給期間など)」「実際いくらもらえるのか?」など、支給額の計算方法~申請方法についてもまとめてみましたので、良かったら参考にしてみてください。

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高年齢再就職給付金


「高年齢再就職給付金」は、雇用保険の基本手当(失業手当)を受給したあと、60歳以降に再就職して、再就職後の各月に支払われる賃金が基本手当の基準となった賃金月額(賃金日額×30)の75%未満に低下した場合に、下記の条件を全て満たしていれば支給される給付金です。

賃金月額とは?
ここでの賃金日額とは、60歳到達時の直近6ヶ月に支払われた賃金の平均を計算したものです。(計算式は「直近6ヶ月分の賃金合計÷180日×30日=60歳到達時点の賃金月額」です。)

ここで言う「賃金」とは、税や保険料などが控除される前の総支給額です。但し、賞与や退職金は含まれません。

また正確な金額はハローワークから発行される「受給資格確認通知書」に記載されています。

2017年(平成29年1月1日)から65歳以上の方も雇用保険に加入することができるようになりました。

今までと変わった点は、65歳以降(70歳、80歳・・・でも)に再就職した場合も雇用保険に加入することができるようになり、退職・離職・失業する度に一時金として「高年齢求職者給付金」を受給することができるようになりました。

詳しくはこちらの記事にまとめていますので、良かったら参考にしてみてください。
65歳からの雇用保険:高年齢求職者給付金の基本手当日額と計算方法

受給条件

  • 60歳以上65歳未満で再就職した一般被保険者であること
  • 60歳到達まで、通算5年以上雇用保険の一般被保険者であったこと
  • 再就職する前に雇用保険の基本手当等を受給し、その受給期間内に再就職した場合
  • 再就職した日の前日までの基本手当の支給残日数が100日以上あること
  • 再就職の際に再就職手当を受給していないこと

受給資格の確認

<例その1>
雇用保険の基本手当を受給中(60歳以降)に再就職をして、基本手当の残日数が100日未満だった場合→受給資格対象外です。

<例その2>
60歳前に退職(離職)、基本手当の残日数を100日以上残して60歳以降に再就職した場合→受給資格ありです。

<例その3>
雇用保険の基本手当を受給中(60歳以降)に再就職をして、基本手当の残日数が100日以上あるが、再就職手当を受給した場合→受給資格対象外です。

<例その4>
雇用保険の基本手当を受給したあと60歳以降に再就職をして、基本手当の残日数が100日以上あり、再就職手当を受給しなかった場合→受給資格ありです。

「高年齢再就職給付金」と「再就職手当」の両方をもらうことはできませんので、注意してください。

高年齢再就職給付金 再就職手当
1年または2年かけて支給 一括で支給
年金と併給調整される 年金と併給調整されない
「再就職手当」についてはこちらの記事を参考にしてみてください。
再就職手当(ハローワーク就職祝い金)いつ?いくら?条件と計算方法

受給できる期間

基本手当の残日数が200日以上 被保険者となった翌日から2年を経過する月まで
基本手当の残日数が100日~200日未満 被保険者となった翌日から1年を経過する月まで
65歳に達した場合 65歳に達した日の月まで

高年齢再就職給付金は一度申請すればその後、期限まで自動的に支給されるというものではありません。2ヶ月に一度(ハローワークの指定する月)申請をして条件をクリアしていれば支給されることになっています。

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支給額の計算方法を確認

「低下率」の計算式を確認

高年齢再就職給付金の支給額を調べるにはまず、賃金の「低下率」を求めます。

<低下率(%)の計算式>

低下率(%)=支給対象月に支払われた賃金額÷賃金月額×100

支給対象月に支払われた賃金額 60歳以降の新しい賃金額
賃金月額 60歳到達時点の賃金月額(※)

※60歳到達時の賃金月額の上限は「479,100円」、下限は「77,220円」です。

上限を超える場合は上限額、下限を下回る場合は下限額となります。

(令和2年8月1日~令和3年7月31日までの金額です。)

支給額の計算式を確認

次に支給額を計算しますが、計算式は↑で出た「低下率」によって変わります。

<低下率が61%以下の場合>

支給額=支給対象月に支払われた賃金額×0.15

<低下率が61以上~75%未満の場合>

支給額=(-183÷280×支給対象月に支払われた賃金額)+(137.25÷280×賃金月額)

支給限度額を確認
高年齢再就職給付金の支給額には限度額(上限・下限)が設けられています。

上限:60歳以降の新賃金が365,114円以上の場合は給付金の支給はありません。

下限:60歳以降の新賃金が2,059円以下の場合は給付金の支給はありません。

また、60歳以降の新賃金+給付金支給額(計算したもの)が365,114円以上の場合は、365,114円から賃金額を差し引いた金額が支給されます。

(令和2年8月1日~令和3年7月31日までの金額です。)

支給額の計算例

<例その1>
60歳到達時の賃金月額が30万円で60歳以降の新賃金額が25万円になった場合

低下率は83%(250,000円÷300,000円×100)ですね。

ただ、この場合、低下率は75%未満ではないので、支給対象外となります。


<例その2>
60歳到達時の賃金月額が30万円で60歳以降の新賃金額が15万円になった場合

低下率は50%(150,000円÷300,000円×100)です。

この場合「低下率が61%以下」なので、150,000円×0.15=22,500となり、支給額は22,500円です。


<例その3>
60歳到達時の賃金月額が30万円で60歳以降の新賃金額が20万円になった場合

低下率は67%(200,000円÷300,000円×100)です。

この場合は「低下率が61以上~75%未満」なので、(-183÷280×200,000円)+(137.25÷280×300,000円)=16,340円となり、支給額は16,340円です。


<例その4>
60歳到達時の賃金月額が30万円で60歳以降の新賃金額が8,000円になった場合

低下率は2.67%(8000円÷300,000円×100)です。

この場合「低下率が61%以下」なので、8,000円×0.15=1,200円となりますが、限度額の下限2,059円以下になりますので、支給対象外となります。

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申請~支給までの手続き方法

申請方法

高年齢再就職給付金の申請手続きは、雇用保険被保険者資格取得届を提出する際に併せて「高年齢雇用継続給付受給資格確認票(初回)」を、勤務先の会社から会社の所在地を管轄するハローワークへ提出し手続きを進めることになっています。

但し、やむを得ない理由などがある場合は、本人でも申請手続きをすることができますので、ハローワークの窓口で相談してみてください。

申請に必要な書類

  • 高年齢雇用継続給付受給資格確認票(マイナンバーの記載が必要です。)
  • 高年齢雇用継続給付申請書
  • 雇用保険被保険者資格届出書
  • 支給申請書の記載内容を確認できる書類(賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など)

提出期限

<初回の支給申請>
特に期限はありませんが、支給申請者を雇用したときに、雇用保険被保険者資格取得届の提出と一緒に申請することをおすすめします。

<2回目以降の支給申請>
ハローワークが指定する支給申請月の支給申請日
指定日はハローワークから交付される「高年齢雇用継続給付次回支給申請日指定通知書」に記載されています。

支給日の確認

ハローワークへ給付金の申請手続きが済むと「受給資格」の審査が行われ、無事に受給資格審査をパスすると、「受給資格確認通知書」が会社へ送られてきます。(受給資格がない場合は「受給資格否認通知書」が送られてきます。)

この「支給決定通知書」には給付金の支給額と支給期間も記載されています。

給付金の振込日ですがこの「支給決定通知書」が届き1週間前後で指定の口座へ入金されるようになっています。

終わりに

民間企業では60歳が定年となりますが、現在では60歳以降も同じ職場で働くケースが増えています。60歳以降も引き続き同じ職場で働き、新賃金が60歳のときより低下する場合は高年齢雇用継続基本給付金が支給されます。

「高年齢雇用継続基本給付金」については、こちらの記事を参考にしてみてください。
高年齢雇用継続給付の条件:支給限度額と基本給付金の計算方法を確認

それでは、今日も最後までお読みいただきありがとうございました。少しでもあなたのお役に立てたら幸いです。

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